はれ、ときどき一期一会

2024年も走り続けることにした。

言葉に詰まり、動けない大人になっていた。

所用で移動中の電車は連休中らしい混み具合で、
それなりに座席は空いておらず、
立っていたら目に入ったのは
老人が吊革になんとかつかまって立っている姿だった。

その方の周囲にはおそらくその年齢の半分くらいの方が多く、
比較的若い男女ともにスマホを見ているか、
旅の荷物をかかえて精一杯だったか、
目の前でよろめくような老人は荷物を持ったまま立ち続けた。

どなたか、席を替わっていただけませんか

わたしはそのひとことが言えず、
言えない自分に苦しくなるだけだった。

そんなことは慣れているというように、
老人はいくつか先の駅で大勢の乗客といっしょに降りた。


こんなことを書くのも、
数週間前、車内で座っている女性の肩をたたき(うつむいて書類に目を通していたから)
かたわらの老人に席を案内した女性を見かけたから。

ああ、よかった、周囲のほっとした雰囲気も感じた。
それでも同じようにはできなかった。
にぎわう車内の空気が凍るのが怖かったのだろうし
うざいと思われたり言われたりするのが恐ろしかったのだ。
偽善者と言われてSNSに投稿されたりするのが。
ただの通りすがりの自分なのに。

次はできるだろうか。自信はない。

ただの通りすがりの自分でありたいためだとしてもいいから、
ためらうことなく動ける大人になりたいと思います。
重老齢社会を迎えるこの町で生きていくから。

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